そこにいるか

個人的な体験、その他の雑感

雑感

O・ヘンリー「緑の扉」翻訳後記(ワーキングガール編)

本記事は、6月5日投稿記事の続きです。 ■まえおき(2回め) O・ヘンリー(オー・ヘンリー)の短編"The Green Door"(緑の扉/緑のドア)を翻訳した。 調子に乗ってマッシュアッ(以下略)……その翻訳過程で、既存の翻訳の解説や訳注でほとんど言及されていない…

O・ヘンリー「緑の扉」翻訳後記(クリフハンガー編)

■まえおき O・ヘンリーの短編"The Green Door"(緑の扉/緑のドア)を翻訳した*1。islecape.exblog.jp翻訳過程で、既存の翻訳の解説や訳注でほとんど言及されていない事柄に気づいた。もちろん「僕だけが気づいた」なんてことは世の中そうそうないわけで、同…

O・ヘンリー「千ドル」の結末について、同作者「運命の衝撃」と絡めて

■以下前置き(やや長め)~ 小学生高学年くらいから少し背伸びをして洋楽を聞き始めるようになった。歌詞カードの対訳と辞書を頼りに原文を眺めていくうちに「ここはこう訳したほうがよいのではないか、解釈がまちがっているのではないか」と生意気なことも…

言葉に罪はなく、されど

あくまでも個人的な話だが、「超絶技巧」という言葉がどうも好きではない。フランツ・リストの作曲でも「超絶技巧練習曲」という難度の高いピアノ曲があるそうだが*1、僕がこの言葉を知ったのはたしか漫画だったと思う。その時は、もちろんなんとも思わなか…

あるいは「近寄らないようにする意思」の話

我々は、ことによると自らを糊塗するために*1、他者の不祥事に引き寄せられすぎているのではないか、そして今のWebでは、そのような心につけこんで人をダメにする無限のサイクルが完成しつつあるのではないか――というようなことについて書きます。 なんらか…

ニンジャスレイヤーを楽しむための、最初にして最大のハードル

(2015年5月14日23時34分追記:読み返したらコピペミスで文意不明の箇所などがあり、こまごま修正) ■長い前置きこのダイアリーでも何度か言及した英国のミステリ小説家で、『女には向かない職業』や、『トゥモロー・ワールド』の題で映画化された『人類の子…

シャーロック・ホームズについてまたもひとことふたことみこと

コナン・ドイルが生み出した英国でも有数のヒーロー「シャーロック・ホームズ」のブームが来ている、とか言われて久しい。ロバート・ダウニーJr.のハリウッド版映画のころからだから、もう4年くらいの息の長いブームである(それは“ブーム”っていえるものか…

朝日新聞がかつての報道の訂正を行ったのを見るや

まるで、それによって今まで言われてきた大日本帝国の行為がそもそもすべて事実無根であり、今こそ貶められてきた日本の名誉を晴らさん!立てよ国民!と言わんばかりの人たちがあまりに目立つ(――"多い"かどうかは知らない)ので、あきれてものが言えない。そ…

"日本"という国の新しいイメージ

※当初、この記事のタイトルを「"日本"という国の新しいイメージ」にしようと思っていました……(半分寝ながらのろのろ書いていたら、まさか荻上さんとタイトルが被るなんて)※2/26追記:けっきょく、タイトルを「海外からどう見られているか異常に気にする国……

「過剰な批判は逆効果」ということについて

人工知能学会の表紙は女性蔑視? - Togetterまとめ http://togetter.com/li/607736 上記の記事については、たまたま比較的早い段階で目にし、その後の展開(と炎上)が予想されたので、主張を絞りつつ2ツイート(※・※)ぶん言及し、それで終わらせるつもり…

この社会が発する言葉に、われわれはなにを込めるのか

(Webで公開するにあたっての注記:原発に関しても中国に関してもまだ事態は収束していないので、特に個別具体的な批判にはしていない。このダイアリーの記事はどれもわりとそうだが、今回は特に覚書の側面の強い、この社会に対する個人的な印象論である)追…

「中国嫁の差別性」によせて

※追記:フォロー記事書きました 「中国嫁」の落穂ひろい(一年ぶり二度目) http://d.hatena.ne.jp/islecape/20110810/yome こちらのほうがいくぶんすっきりしています。文章量、はんぶん。 ※冒頭補記(2011.8.3 16:23) こんにちは。この記事を書いて2日後…

「メディア」であるということ

この一か月、複数の用事で忙しくしていたけれども、ひとまずかたがついた。結果はどれも残念としかいいようがない感じに終わったが、まあ、いろいろあったのでしょうがない。最低限の義理は果たした(=単に「投げ出してない」という程度の意味)ということ…

図書館再雑感

リカーズは皿洗いする元気を出そうと思うのだが、いつもの憂鬱に襲われ、自分の家にいながら他所の人間のような気がしてならなかった。ラークソーケンの風車小屋の、暖炉の燃える石壁の部屋で、ダルグリッシュにウイスキーをご馳走になった時の方が、自宅の…

手のうちを明かすということ

当たり前のことだが、この世界に自分と同じ人間はいない。たとえ「遺伝子がまったく同じ」という一卵性双生児であっても、100%同じ経験はしない。遺伝子は同じでも、その生育歴が双子をまったく別の人格に育て上げる。生活上の好みや些細な癖から、政治信条…

オンラインに生きる(PART3)

http://d.hatena.ne.jp/islecape/20101231/p1 新しい年。たぶん三日坊主も無理。id:islecapeというアカウントを使い始めてそろそろ3年になる。僕が2008年3月末からWeb上で操演している、テキストを基本に組み立てられたこのオンライン人格。10代でもあるまい…

時として突きつけられる不条理を「不条理」と感じるのは独善かもしれない(改題)

前回、劇場版SPの簡易レビューを投稿した際に、最後のほうで話がずれ始めたその続き。 「こちらは銀河超空間土木建設課のプロステトニック・ヴォゴン・ジェルツです」声は続けた。「すでにお気づきと思いますが、銀河外縁部開発計画に基づき、この星系を通る…

言語は思考を規定する。言語が思考を阻害する。

前回のエントリで、自分の素人創作について語ったのと相前後して、妙に「処女作」という言葉をあちこちで聞いたので、もともと気になっていたこともあり、ひとこと書いておこうと思う。何が気になったのかというと、 しかし、作る前が処女だったわけで、発表…

六〇〇〇年がそこで眠っている

一九七〇年代のことだ。妻キャロルとわたしは地方の映画館で、なんともひどい映画を見ていた。あまりのひどさに、わたしは途中でつぶやいた――「こんなところで時間をつぶしてないで、もっとおもしろいことをしたいな。今の時代から滅亡するまでの人類の歴史…

流言とデマとTwitter

Webに真偽不明の情報を流す行為を「入会地の火遊び」とでも呼ぶのはどうだろう。 そのうちすべてを燃やす。 流言拡散装置としてのTwitter むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが暮らしていました。毎日毎日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあ…

ニューヨークよ、おまえもか

東京ローカルのテレビ局・東京メトロポリタンテレビジョン(MXTV)のニュースで、米ニューヨークの24時間ニュースチャンネル"NY1(ニューヨーク・ワン)"の報道を字幕つきで流すコーナーがある。話によれば提携局らしい*1。それによると、ニューヨーク市の公…

批判はかわさず、それで受けた傷口を観察する

十九世紀後半から二十世紀初頭にかけて、非イスラーム・近代主義の立場から、『女性解放』(1899)を著すなどし、「エジプトフェミニズムの父」と呼ばれる弁護士のカースィム・アミーンが「一夫一婦」を称揚する運動を行ったことについて、人類学者で、女性…

「私」と「公」のあいだ(Twitterにおける情報選択の困難さについて)

Tweak Twitter上で発言をフォロー(購読)している人が増えてきたからか、あるいは、フォローしている人たちがTwitterというメディアに「慣れた」せいなのか、僕の個人的な観測範囲内でもかなり直截的な性の話題が目につくようになってきた。旧来型の受動系…

水戸黄門のもたらす浄化

京都大学人文科学研究所の教授、金文京(57)は、水戸黄門の印籠と同じような存在が韓国と中国に存在することに気がつき、趣味で調べ本にした。 東京生まれ、在日韓国人二世の金は、小さいころから家で韓国の文化に触れてきた。印籠と同じように平伏させる道…

「私は感心した」僕は心配です

2009年11月8日付の朝日新聞投書欄に、「社会を冷静に観察する中学生」という投稿があった。中学校の教員によるもので、中学三年生の国語のテストに「鳩山政権の政策をひとつ取り上げ、自分の考えを200文字以内の文章にまとめる」という課題を出したそうだ。…

国をあげて

家にいるとNHKのBS-1をつけっぱなしにしていることが多いのだが、アジアの報道番組などを特集する夕方のニュースの番宣が、「いま、韓国は国をあげて子供たちのアトピー性皮膚炎対策に取り組んでいます」というようなことを言っていた。 確かに病気の人はつ…

興味と関心の彼我

以下は、 勧善懲悪 - NaokiTakahashiの日記 http://d.hatena.ne.jp/NaokiTakahashi/20090819/p1 のブックマークにつけたコメントをふくらませたもの。特にトラックバックはしない。 ※後日追記:なんだか「彼我 読み方」で検索してこられる方が多いようなので…

「決して報われることのない、国家への限りない愛のあかし」

酔った父は、学生のころ機動隊との衝突で受けた傷をそう呼んでいた。(※後日一部補筆) function いま一部でちょっとした話題になっている「反日上等」という言葉から(「反日」という一方的なレッテル張りを無化する意志の現れと同時に)、「日本への愛」を…

なにを見てもなにかを思い出す

via http://d.hatena.ne.jp/islecape/20090514/p1 case1 もう15年も前のことだが、「ナタ・デ・ココ」なる食材が流行ったことがあった。僕自身は子供だったので、どれほどの流行だったか肌で感じることはなかったが、それでも「ナタ・デ・ココ入りヨーグル…

ゲームと女性と抑圧構造

via http://d.hatena.ne.jp/islecape/20090108/p8※5/19追記:なんか文章としてかなりまとまりがないので、何度か書き直そうと試みたのですが、もとの文章が堅固なまでにまとまりがないので、どうにもうまくいきません(おいおい再挑戦するつもりです)。とり…