そこにいるか

個人的な体験、その他の雑感

女性と教育

パキスタンの女子校 閉鎖危機」という新聞記事と、それに関連した次のエントリを読んだ。

女子教育は反イスラム? 鰤端末鉄野菜 Brittys Wake
http://d.hatena.ne.jp/Britty/20090120/p1

岩波文庫で翻訳のコーランを読んだだけでは、コーランを読んだことにはならないそうだし*1、なにが「反イスラム」なのかということについて、ここでは考えない。女性が教育を受けたら、なにか不都合なことになるとうすうす感じてるんじゃないの、と皮肉だけ言っておく。記事によれば男子校も放火されているし、子どもに無知でいてほしいんだろう。

それはともかく、この記事を読んで僕が思いいたしたのは、女性が教育を受けるということについて否定的な見方をする人のことである。そういう人はこの国にもいる。僕の祖母は、大学の運動部から誘いを受けたが家族の無理解で果たせなかった、とよく家族に愚痴をこぼしていたらしい(当たり前に大学を出た祖父に対する劣等感もあったのだろうか)。祖母がどこの出身かには触れないが、まあ相当な田舎ではある。

祖母の挫折から半世紀以上たって、さすがにもう「そういう人がこの国にもいた」という具合で過去形になったかといえば、どうもそうは思えない。僕の幼稚園のころの同級生(男の子)の家族も、その類なのではないかと思う。母親がとても教育熱心な人で、彼は幼稚園児にして英会話、算盤、ピアノ、武道を習っていた。一緒に遊んだ記憶が3回くらいしかない。そして当然のように私立小学校に行った(ひょっとしたら、私立幼稚園も受験していたのかもしれない)。

しかし彼には姉妹がいて――こう言ってはなんだが、完全に放置されていたのである*2。いつもきちんとしていた同級生と違い、身なりも気を払われていないようだった。家に遊びに来た彼女たちにおやつをあげたら、冷蔵庫の中の漬け物まで食べていった、と、僕の母が反省していたこともある(「あれはひょっとしたらネグレクトのあらわれで、何かするべきだったのではないか」と)。僕ら一家は引越しをしたので、その後のことはわからない。

この一件は、女子教育うんぬんというより、「長男」に期待をかけるあまりのことかもしれないが*3、僕にとっては、女の子の教育に不熱心だった、ということで唯一見聞した事例である。東京に住んでいると、あまりそういう話は聞かない(さらに言えば今は一人っ子が多いので)。ただ、時おり耳にするあれこれから、まだ「高等教育を受けさせるなら、女子より男子」というような考えが、まだこの社会に存在するのではないのかというふうに思うのである。

女性に教育を与えないというのは、まず家父長制に基づく男性優位的な考えに始まるものなのだろうが、女性が知的な分野で活躍するような現代日本にあって、それでもなお男性のほうが優先されたりするのは、女性の賃金が男性と比較して低いからだろうか? そして、女性の賃金が男性より低いのは、かつて女性が男性より役に立たないと考えられていたゆえだろうか? このゴルディオンの結び目をいったいどうやって断ち切ればいいのだろう。

*1:コーランとは、アラビア語によってもたらされたものであって、他言語に翻訳されてはそのエッセンスが伝わらないとかなんとか。

*2:子供心にそういうふうに感じた――のだが、実際にどうだったかまでは……。

*3:母はそれを反面教師にしたのか、僕のことは放っておいて妹にピアノと算盤と習字を学ばせたりした。あれ?