そこにいるか

個人的な体験、その他の雑感

育児とWebの日々から職場復帰するブロガーへ

日本は世界でいちばん女性漫画家が多い国、と聞いたことがあります。もちろんそれには「女性作家の作品を受容する女性読者」の多さや、「作家の女性性を利用する側面」の可能性など、さまざまな要因もあるのでしょうが、実力のみではかられる世界において、「性別というファクターに関係なく、表現者がその能力を示した」結果のひとつの証左として慶賀すべき事実ではないかと思います。

半年ほどのご活躍の結果、あなたはささやかながら「影響力」をお持ちになるまで地歩を固められました。googleの検索窓におなたのお名前を入力しようとするとアルファベット六文字目でサジェストされる程度には、あなたへの関心を持つ人がいるようです。あなたがブロゴスフィアで歩んでこられた足跡は、広大なWebにおいては辺境もいいところの「はてな」における小径にすぎないという人もいるかもしれません。しかしその「小径」さえ、大きな変化へと至るひとつの可能性であると、僕は考えています。

いまWebは、多くの女性に「機会」を与えています。それは、母としてではなく、妻としてではなく、そして実は女性としてでもなく、あなたという人間に与えられた「表現者」としての可能性です。

長い人類の歴史のなかで、多くの女性は男性ほどに発言の機会を得ることなく、歴史の影に埋もれてきた事実があります。男女同権がいわれるようになった現在も、女性の知性を、それが「女性のものである」というだけの理由で見くびる人々は存在しているようですが、そうした人々のとんちんかんな認識に触れた第三者に、そのような女性蔑視への違和感をもたらすのは、ほかならぬあなたのような方々の日々のご発言なのです。

あなたが得た可能性は、あなたがひとつの独立した知性であることを証明すると同時に、女性という属性を持った人々の「機会」としても使えるのです。

ことさら男女に違いがあることを指摘する人々は、ときに同性同士にも大きな隔たりが存在することを忘れがちです。その多様性を可視化するのがWebなのです。あなたはなにを意識する必要もありません。あなたが思う通りに活動なされば、それだけで社会は変わっていきます。あなたという個性が社会に対して発するメッセージが、あらゆるものをドラスティックに変えることはないでしょう。しかしそれは「ゼロ歩」ではありません。しかもたったの「一歩」でもありません。いまやあなたのひとことは、数十歩にも数百歩にもなりうるのです。

多くの女性労働者は、女性という属性の枷をはめられつつさらに擬似的男性として扱われており、あなたのこれからのご苦労を思うと、気安く「頑張れ」などという言葉をかけることはためらわれます。ですからどうか決して無理をなさらずに、あなたがお持ちの可能性を大切になさってください。そして、そのあなたの可能性を、他の人々――あなたのあとに続く人々の道標になるよう計らってください。

かつて多くの女性たちが少しずつ道を切り開き、いまのこの社会を見ることなく去っていきました。ほんの「小径」でさえも残そうという努力にあなたが参与するならば、われわれが見ることのできないなにかを、後世において誰かが見ることになるのです。