医者はドクター、外科医はミスター?
"Come, come, we are not so far wrong, after all," said Holmes. "And now, Dr. James Mortimer--"
"Mister, sir, Mister--a humble M.R.C.S."「よしよし、どうやら僕たちもそれほど捨てたもんじゃない」ホームズは言った。「それで、ドクター・ジェームズ・モーティマー――」
「ミスターですよ、ミスターと呼んでください――ただのM.R.C.S.*1ですからね」"THE HOUND OF THE BASKERVILLES" by Arthur Conan Doyle*2
ワトスンはよく「ドクター」呼ばわりされているのに? 子どものころ、このやりとりが心に引っかかったのだが、疑問をずっとそのままにしていた*3。その後もうちょっと大きくなってから読んだのが;
「もうこれ以上議論してもラチがあかないと思いますから」
「今夜八時まではそうですがね、ドクター」
ダルグリッシュの語調がカチンときたスティーヴンは、外科医はミスターなになにと呼ぶのが常道だと指摘したくなった――これははじめてのことではなかったが。しかしその無益さに気づき、母の頼みを思い出して、ささいなことで識者ぶることは思いとどまった。
これにより、「理由はわからないが、どうやら外科医のことをドクターとは呼ばない習わしがあるらしい」とは思ったものの、それでも腰をあげる気にはならず、またしばらく放置して――その後ネット検索が発達して、そういうほんのちょっとしたことを調べられるようになったのだが、やはりというか調べないものである――数日前、『女の顔を覆え』を読み返すに至り、ようやく調べることにした。コンピューターの前に座っていたから。
「ドクターではなくミスター」でgoogle検索を行い、あっさり「航空の現代」から《ドクターとミスター》(http://www2g.biglobe.ne.jp/aviation/drearlam.html)という記事を発見*4。なるほど、こういう事情が(本当は、ネット上の情報を鵜呑みにせず、もう一段二段深く調べ込むべきなのだろうが、まあいいよね)。
それにしても、疑問を放置してしまう。疑問に思ったことすら忘れてしまう。よくないなあ。