id:NORMANさんにお会いしました(ハイク増補版)
あれから一週間経ったので、超ごく一部からご好評いただいたハイクエントリをこっそり書きなおして転載。
id:islecapeさん、明日の夜あたりに仙台に戻ろうかなと思ってるんですが、明日もしお暇があればお茶でもどうですか?お忙しいようであれば、またの機会の楽しみにとっておくことにします。いかがでしょう?
すいません、せっかくお誘いいただいたのに、結局ここ数日は『忙しいというわけではないけれど、使える時間が細切れで「お台場ガンダム見に行こう」というような状況ではないのが現状』(http://twitter.com/islecape/status/3358707909)こんな感じで……。
そこで代替案を考えたのですが、夜、仙台にお帰りになるということで、東北新幹線をお使いになるということでしょうか(すいませんよくわからないのですが仙台直行はないのかな?)。それが18時ごろということであれば、僕が熱中症対策のカルピスウォーター(なぜ)を持って東京駅構内に駆け付け(京葉線で行きます)、それを手土産としてカバンに滑り込ませつつ暑苦しい抱擁ののち、お見送りもせず僕もすぐとって返す、というようなことはできそうです。
食事の後、君がブロードウェイを歩いているとしよう。煙草を吸いながら、劇場で悲劇かなにかでも見ようか――などと考えていると、君の腕に手をかけるものがある。ゾクゾクさせる瞳、ロシアふうの喪服*1に素晴らしいダイヤモンドで着飾ったとても美しい女性だ。熱いロールパンを君の手に押し付け、小さなハサミで君のコートの二番目のボタンを切り取るや、いわくありげに「平行四辺形!」と叫ぶ。そして、あたりを気にしながら立ち去ってしまう。これこそ真の冒険である! 君は乗るだろうか? いや、乗らないだろう。君が純粋な冒険心を持ち合わせた数少ないひとでもないかぎり――
"The Green Door" by O. Henryこんな感じで。
……
うーん。
僕が可憐な乙女なら万難を排してもカルピスウォーターを渡しに行くのですが、あいにくいくらか年上(たぶん)の何の変哲もない鮫なので、id:NORMANさんがどんなに冒険好きでもNo thank youでしょうなやっぱり。
(熱き抱擁ってのは相当冗談なのであまり深く考えないでください。念のため)
ううむ、なるほど……。
明日の夜あたりに、ってのは特に理由はなくて、帰るのは明日の何時でもいいし明後日でもいいんですよ。まだ切符も買ってないし。
id:islecapeさんのご都合に合わせますが、貴重なお時間をいただいてしまうのは辛いなぁ……。
ちなみに、僕はわりと冒険好きですよ!
ほうほう。ではお会いする前提で。ただここしばらく状況は同じようなものでして。出発前の二時間ばかりいただいて、東京駅のどこかで……てな感じでしょうか。で、結局東京駅からですよね? 高速バスではなく?
>出発前の二時間ばかりいただいて、東京駅のどこかで……てな感じでしょうか。
おお、ではそんな感じでお願いします。となると、何時の新幹線に乗ればいいだろう?あ、そういうわけで新幹線です。東京駅です。
待ち合わせ時間はどうしますか?
by NORMAN 2009-08-18 00:47:11
東京駅で待ち合わせ場所と言ったら銀の鈴でしょうかねえ(http://oshiete1.goo.ne.jp/qa915507.html)。実際のところ、僕も帰省の時くらいしか利用しないのであまりわからないのですが。新幹線の出発時間さえ教えていただければ時間はこちらがなんとか合わせます(明日、というか今日の午前のできるかぎり早い時間に教えていただければ……)。
了解しました。
えっと、じゃあ18時00分か18時08分か18時20分の新幹線(の自由席)に乗ろうと思います。どれに乗っても仙台にはかならず停車する(というか仙台終点)ので、僕も楽ですし。
それではおやすみなさい。10数時間後に会いましょう!
そして、銀の鈴広場。
東京駅構内の有名な待ち合わせスポットである。id:NORMANとの待ち合わせ場所にここを選んだid:islecapeがガラスケース内の大きな鈴を背に、手にしたハードカバーをめくる。待ち合わせの目印だ。
約束の時刻16:00になったその刹那、三本の矢がid:islecapeを襲った。右肩、左肩、そして胸を貫き、id:islecapeがガラスケースに釘づけになる。背の高い若者が、もがき、苦痛にうめくid:islecapeに歩み寄った。id:NORMAN、その瞳が憎悪に燃えていた。
「のこのこやってくるとは愚かな……」
「な、なにを……」
「親しげに近づくふりをしたら、あっさりと騙されたな。以前の恨み、ここで晴らしてやる――」
「恨み……だって?」
「そうだ、あんたは以前、志村貴子を『ファンタジー』とかなんとか好き勝手に批判してくれた*2」
「そんな……ことで……?」
「あと菊池ナナコと千葉さおりの描きわけが出来てないという侮辱もしていたな!」
「そ、そ、そ……そんな…………ことで……!?(てゆうかそれは本人が『放浪息子 (1) (BEAM COMIX)』冒頭のおまけ四コマでネタにしてる!)」
「そんなことさ、俺がどれほど志村貴子作品を愛しているか、あんたにはわかるまい……軽はずみな言動をあの世で悔いるがいいッ!!」
と、id:NORMANは懐から短刀を手に取り、id:islecapeの胸に深々と――
「ッ!?」
――突き立てた、はずだった。だがそれはシャツをかぶせたただの丸太だ。
「気付いてないと、思ったのか?」id:islecapeが背後から声をかけた。「なぜ、たいして深いつきあいでもない僕に会おうなどと声をかけたのか――おかしいと思わない方がどうかしている」
「……ふん」id:NORMANは一瞬見せた動揺をすぐに隠した。「変わり身の術か。祖先が忍者だというのは勘違い、と言っていたはずだが*3」
「勘違いしていたのは事実だ。だが、忍術をマスターしていないとはひとことも言っていない。僕は幼稚園のころから白土三平の『忍者武芸帳・影丸伝』を読んでいるんだ」無風道人が好きです。
「そうか」
と、いかにも楽しそうに笑うid:NORMANの姿が霞のようにかき消える!
「!?」
驚きとっさに身構えたid:islecapeの足元で連続した鈍い音。苦無(くない)が三本、床に刺さっている。それだけだ。しかしid:islecapeは驚愕の表情で固まる。
(なッ……影縛り!!)
「気付いてないと思ったことに気付いてない、と思ったか? そして――」天井に逆さ立ちしたid:NORMANが、くるりと回転しながら音もなく飛び下りた。「忍術をマスターしているのが自分だけだと?」
id:NORMANは、どこから取り出したのか備前長船を抜き構えた。
「覚悟――!」
と、動けないid:islecapeの背後から斬りかかろうとして――
「っ!?」跳ねのく。両脇から飛びかかるふたつの影に気付き、間一髪でかわした。id:islecapeがふたり。影縛りで動けないものを含めると三人――!
「あんたら、まさか……」id:NORMANは誰何しなかった。
「ご明察」左右のid:islecapeが同時に言った。
「id:ISLECAPEだ」と右。
「そしてid:Islecape」左は影縛りの苦無を払いながら言う。
「ふう」と、id:islecapeが冷汗をぬぐいながら、id:NORMANに向き直った。「気付いてないと思ったことに気付いてないと思ったことに気付いてない、と思ったかい? 僕の先祖の一人が白虎隊ゆかりのものだと言ったろう?*4 あれは僕がうっかり口を滑らしてしまったのだが……それで僕の土地勘を警戒して周辺に気を配る、という頭は回らなかったようだね。君のことをあらかじめ探ることは簡単だったよ」
id:islecapeは自分の言葉に対するid:NORMANの反応を楽しむように言葉を切って、
「つまり、ここにはいない四人目の僕――id:IsleCapeが、いま君の家にいるのさ」
「なん……だと…………」(石田雨竜ふう)
「すでに手の内は調べつくしてある」id:Islecapeが声をかけた。「サブアカウントは持ってないようだが、それが君の失策だ。id:NorManぐらい作っておけばよかったものを*5、よりによって最初から大文字アカウントとは。それは『はてな』でしか通用しない」
「そう」id:ISLECAPEが言葉を継ぐ。「まったくその通りだ」なんかやたら実感がこもっていた。
id:islecapeが余裕の表情で微笑みかける。「ゲームは終わりだ」
だが、id:NORMANは落ち着いていた。あまりにも落ち着いていた。背筋を伸ばし、瞳を閉じて深呼吸する。
そしてぱっと目を開き、id:islecapeをまっすぐに見つめてたったひとこと、
「どうかな?」
その言葉が発せられるや否や、激しい旋風があたりを――
……
というようなことは全然ありませんでしたよ!
てなわけで前置きがやたら長かったですが(ここまで読む人がいるとはとても思えん)去る八月十八日、大学漫研部員としてコミックマーケットへ参加するため東京にいらしたid:NORMANさんにお会いしました。前述のふざけた雑文にあるように、東京駅構内の「銀の鈴広場」で16:00に待ち合わせ。午前と午後いちで複数の別件を片付けた僕は、うっかり本屋に足が向きそうになるのをこらえつつ、お土産*6を購入。さらに、僕の本棚のスペースを稼ぐため押しつけてやろうと、僕の父が関わった本*7をお土産の紙袋へ放り込み、東京メトロ東西線大手町駅から連絡通路を東京駅へ。
先だってid:NORMANさんに会われたid:WinterMuteさんのハイクによれば、id:NORMANさんは「さわやかなイケメン」とかいう話。横に並びたくねえなあとは思いつつ駅構内を急ぐ僕。三時半ごろid:NORMANさんから「到着したので、そっちも到着したら教えて」というスターコメントによる連絡があったのですが、それに気付くことなく三時四十五分ごろ「銀の鈴」前に到着。あたりを見回して鈴から少し離れたところにあるベンチで一休み、五十五分ごろになってのろのろと鈴のほうに近づきました(ご、ごめんなさい)。
id:NORMANさんは、想像とは違いましたが、すらっとしたまったくの好青年でした(なぜか「小柄な少年」みたいなイメージを抱いていたのですが、思い込みが激しい僕の想像なんてあてにはなりません)。約175cmの僕より数cmは背が高く、いかにも知的そうな面立ち。顔をそむけ、思わず逃げたくなる衝動を(某シンジ君のように)こらえながらお土産を渡して、とりあえず落ち着ける場所を探そうということで一致したものの、しかしここでトラブル。仙台からいらしたid:NORMANさんは当然として、東京で生まれ育った僕自身、東京駅のことはほとんど何も知らないのです(西日本出身である親の田舎に帰る時くらいしか使わない)。id:NORMANさんが「朝から何も食べていない」とおっしゃるので、「じゃあなにか夕食のようなものでも」とふたりして食事処を探したのですが、ちょうどいいお店が見当たらず数分ウロウロ、これでは貴重な時間を無駄にするばかり。結局改札を出たところにある喫茶店に行くことにしました。
で、ここでまたトラブル。id:NORMANさんの新幹線の切符は改札を出ることが許されたのですが、普通切符の僕は駅の人に「一度出たら買い直さなきゃダメ」と言われてしまったのです。そうなのか。しかも、「仕方ない」と、切符を渡そうとしたら手がすべって放り投げるような形に。改札を出たあとid:NORMANさんが「融通きかないですね」と言ってくれたときは、(もしかして「最近の若者はまったく態度悪い」とか思われただろうか……)などとひとり自己嫌悪に陥っておりました。まあこういうのはわりといつものことですがね(僕は人見知りしないかわり強迫観念が強いのです)。
喫茶店に入ってとりあえず一息。僕はアイスカフェラテ、id:NORMANさんはジンジャーエールを注文。改めて挨拶を交わしたあとは、コミケとか志村貴子とか無難(?)な話をすべきところが、けっきょくやっぱりはてな村のこと――お互いすっかりはてな民。
「相互お気に入り」は趣味で結びつくぶんには良いけどねえ、とか、お互い三桁のブックマークを集めたエントリはあるものの、これは書き手の功績では決してなく、単にタイミングがよかっただけだねえ、とか、すぐれたエントリはいくらもあるのに、そういうのに限ってブックマークがほとんどつかなかったりするのは「はてな的偏り」ってやつがあるからかもしれないねえ、とか、どちらからともなくいろいろ愚痴っぽくなってしまいました。id:NORMANさんは「文章は苦手」とご謙遜でしたが、それよりなによりデータの扱いに強く、ご自身のダイアリーでも各種論料の提供などを試みておられる方。もっと前向きで理想的なWebへの参与――「バカと暇人のもの」などとくさすのではなく、参加者各々がいかにWebを価値化するか、みたいな話をしようと思ってたのに。先輩風ふかすつもりはないですが、うまくリードできず申し訳ないかぎり。
しかしまあこんな微笑ましい会話もありましたのです。
NORMAN「コミケで有村(id:y_arim)さんのスペースに行ったんですよ」
islecape「へえ、そういや有村さんがエントリでノーマンさんに言及してたこともありましたっけ。挨拶したんですか?」
NORMAN「いやあ、『間に合ったんですね』て言っただけで」
islecape「ノーマンさんのことは認識してると思いますがねえ」
NORMAN「んー、『お前なんか知らん』とか言われたらちょっと……スペースの前を行ったり来たり三往復くらいしちゃいまして」
islecape「知らんてこたないと思いますが……」
なにこの女子中学生の「告っちゃいなよー」「えー……でもぉ……」みたいな会話。あまりにも残念なことに我々は成人男性です。
そんな感じで、喫茶店にはけっきょく一時間半ほど居座りました。話し足りない感はありましたが、18:00発か18:08発かの列車に乗るのがいいだろうと思い、僕の方から切り上げ宣言。ちなみに僕がおごるって言ってたのに結局割り勘みたいなかたちになってしまいました。「他の方にさんざんおごってもらいましたから」とおっしゃるもので。……まあ、しょうがないか、な。
で、id:NORMANさんが荷物を預けたコインロッカーへ行ったあたりでようやっと志村貴子の話題になったのですが、話してみると僕もid:NORMANさんも『放浪息子』入学組だそうで、しかもどうやら志村さんがコミカライズした『ルート225』(原作:藤野千代)のオンライン書評に僕がブックマークをしたことが我々の馴れ初め(違うって)なのでは、というような話に。僕は「先着がいるぞ」、id:NORMANさんは「あとから誰か来たな」てな感じ。世に志村貴子作品レビューやそれをチェックするソーシャルブックマークは山ほどあるでしょうに、なにがきっかけになるかわからないものです。
見送りのために新幹線プラットホームへの入場券を購入し、いかにも「お土産に買ってけおまいら」と言いたげな東京銘菓「ひよこ」売り場を横目に(そうと知っていればカステラなんか買わなかったのに)エスカレーターを上ると、18:00発の列車が出発間近でした。けっきょく何も食べさせてあげられなかったのが気になるのですが、ま、id:NORMANさんも大人だから大丈夫だよね、ってことで、ささやかなオフ会もどきはどうやら大過なく終了。お疲れ様でした。別れの挨拶(抱擁はなし)をかわして、列車の出発を普通に見送ったあと*9、僕は東京駅のはずれのはずれにある京葉線ホームに足を向けたのでした。
(この文章は、主にふたりオフ会キーワードスレッドへ投稿されたはてなハイクエントリを加筆・修正したものです)
*1:「クロテンの毛皮のコート」かもしれない。即興訳なので。
*2:cf. http://h.hatena.ne.jp/islecape/9258647326791082128
*3:cf. http://h.hatena.ne.jp/islecape/9234071003880268827 & http://h.hatena.ne.jp/islecape/9234071026675572367
*4:cf. http://h.hatena.ne.jp/islecape/9236533975625965200
*5:あとで確認したら、id:normanとid:Normanは別の人が取得済みだった(利用した形跡はなし)。
*6:全国どこでも買える、なんの変哲もない文明堂カステラ。文明堂には悪いけど、あらかじめ予定が立っていればもうすこし気の効いたものをお渡ししたかった……まあ会おうと決まったのが前日の夜のことだったのでいかんともしがたい。
*7:僕は子供のころ読んでかなり影響されたのですが、しっかりした判断力がある人ならそれほどの悪影響はなかろうと思って。
*8:超適当に描いたイラストながら、大学でid:NORMANさんと親しいid:TOkimeki_TOnightさんからお墨付きをいただきました。わーい。……あ、いちおう言っときますけど、実際の僕は着ぐるみ脱いで行きました。
*9:もちろん泣きながら列車を走って追い掛けるようなこともせず……。