そこにいるか

個人的な体験、その他の雑感

個人的な幸福

あえて名は秘すが、あるコラム連載を持つ素人の執筆者*1で、どうしても好きになれない人がいる。その人の考え方はあまりにも情緒的に過ぎるし、また文の書き方に品がない。言葉づかいに知性が感じられない。公に文章を発表する資格のない人と、内心で苦々しく思っていた。

先日もその人のコラムは当然に掲載されており、とりあえず読んだ。

面白おかしく書こうとしてか、まとまりを欠いた文章ではあった。しかし、ひとつだけいつもと違った。その人が言わんとする主張にうなずける部分があったのである。この人の書いたコラムをずっと批判的な視点で読みつづけてきた――時には目もくれないこともあった――が、深く同感したのは初めてのことであった。

この人に対する評価は今もほとんど変わらない。今まで書いてきた文章の拙劣さと思考の幼稚さを、僕は決して忘れない。もちろんこの執筆者にとって、僕の内心の評価など知ったことではなかろうが。

ただ単に、僕の内心上の問題として嬉しく思っている。嫌悪さえしていた人に、たった一瞬でも共感できたことを。

*1:この人は他分野で活躍する人だが、その業績については存じ上げない。