そこにいるか

個人的な体験、その他の雑感

人間万事チャンスでピンチ


関東大震災はチャンスだ」などと兵庫県井戸敏三知事が言ってしまったとか。桂馬の動きで真横に飛び跳ねたような発言で、もちろんいただけない。それが阪神大震災で痛手を被った兵庫県知事のセリフとなればなおさらである。まあ彼に地震を発生させる権限があるわけでもなし、東京生まれ東京育ちとして僕は別に何とも思わないが。

翌日になって知事は発言を撤回した。「東京一極集中ってけっこうリスクあるから、万が一に備えて、関西圏もそういう役割を引き受けられるようにしようよ!」みたいなことを言いたかったのだろう、ということは第一報から伝わっていた。仮に兵庫県知事が東京集中のリスクに触れたとして、それもやはり心の奥底で「関東機能不全の可能性」=「東京はじまったな」=「関西大チャンス」てなことを考えているな、みたいな意地悪い見方もできなくはないが(関西も一緒に共倒れする可能性のほうが高いと思うけど)、政治家というものは来るべきナニカへの十全の考慮を期待されているのだから、その程度で批判されるはずはない。

しかし「関東大震災」=「チャンス」などと言うのは「誤解を招く」云々の話ではない。そのままの状態で破壊力十分の発言ではないか。


ちなみに井戸知事はわれらが東京都知事と浅からぬ因縁というか感情のもつれがあるとかないとかいうことらしい。心の奥底に秘めたダークな感情がうっかり表出してしまったのだろうか。勝手にdisりあって共倒れしてくれたらいいんだけど、とも思ったが、都知事も意外にクールな対応をしているようなので(あとで確認したらそれほどでもなかったけど)、井戸知事の一人負けっぽそうだ。


東京都民からすれば、他の県のチャンスのための踏み台にはなりたくないなあと思うばかりだが、でも少し変だ。そもそもまだ発生していない(第二次?)関東大震災に対して「これはチャンス」というのはおかしい。と思って発言をよく見てみると、

井戸知事は「東京一極集中を打破するための旗を揚げなければならない」と前置きしたうえで、「関東大震災なんかが起これば(首都圏は)相当ダメージを受ける。これはチャンス」と発言。さらに「首都機能を関西が引き受けられる準備をしておかないといけない」などと述べた。 (http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200811110091.html - asahi.comから引用)

とある。

ははあ。

文意が少しねじ曲がって伝わってきたようだ。

前後の文脈から考えて、これは「関東大震災を乞い願う言葉」というより、「関東大震災なんかが起これば(首都圏は)相当ダメージを受ける。(そういう危機感が広く共有され、首都機能分散を訴えていく気運も高まっているので、)これは(関西圏をエンパワーメントしていく)チャンス(にできるのではないか)」などというように、「関東大震災」を枕詞にして単に関西を鼓舞するニュアンスで言っただけ、と好意的に受け止めてあげることもできなくはないこともないというわけでもないのではないかと思うけど、やっぱり世のなか甘くないね。


「ピンチはチャンス」という言葉があるが、「チャンスがピンチ」になるということもあり得るわけだ。今回は文字どおり、関西経済にもの申す「チャンス」を個人的な「ピンチ」にしてしまったという話でありましょう。もう少し「チャンスがピンチ」で宮沢章夫ふうのネタに走りたいところだけど、今日はやめておこう。発言は慎重に!