そこにいるか

個人的な体験、その他の雑感

向こうが紛らわしいというなら、もしかしたら本当にそうなのかも

TYPE-2 | 紛らわしい行動は慎め
http://type2xxx.blog104.fc2.com/blog-entry-1189.html

このようなエントリがあったことを、

警察が犯罪の布石を打ってる気がする - 狐の王国
http://d.hatena.ne.jp/KoshianX/20081102/1225583509

こちらで知った。


さてこの話、事実かどうかは不明だが、必ずしもありえない話ではない。ただし、これが事実なら、先のエントリには省略されている段階があるのではないかとも思う。逮捕することは相当に問題だが、この不幸な結果に至るまでには、なにか相当な感情的衝突があったのではないだろうかと思われるのである。

「紛らわしい行動は慎め、今どき娘と二人で買い物とかありえないからな」という警官の捨て台詞だが、はたして「紛らわしい行動」というのは「娘と二人で買い物」だけにかかる言葉なのだろうか?


以下に記すのは、個人的体験からくる推測に基づくエントリなので、その点はあらかじめお断りしておく。


僕の父はフリーランスの編集者だった。

ボート部の活動に入れ込んだあげく大学受験に失敗して上京し、70年安保闘争に首を突っ込んで新聞記者を夢見ながらドロップアウトした法学部崩れだそうな。

僕自身が見たわけではないし、父もそんな話はしなかったので知らなかったが、複数の友人によれば相当な武勇伝があったという。それらはにわかには信じがたいような話なのでここには書かないけれど、多少誇張はされていたとしても事実なのだろうな、と思う。僕自身、父のとんでもない行動を目の当たりにしたことは一度や二度ではないからだ。

小さな僕を連れていたにもかかわらず、父がお巡りさんに呼び止められたことがある。なにしろ子供だったので、細かい経緯などはよくわからないのだが、たぶん職務質問だったのだろう。なにしろ見た目がどことなく暴力団員ふうで(パーマはかけていなかったが)、体格もよい。おまけに平日の昼間っからノーネクタイのジャケットにサングラスなんかかけて。

(幼稚園のころ「お父さんの仕事は?」と聞いたら「やくざ」と答えたので、僕自身「そうだったのか」としばらく信じていた。しかし、もっと小さいころに図書館で「これは父さんが作った本だよ」と言っていたことがあるのを思い出し、一人で混乱した。言っている意味がわかったのは中学くらいになってからだ)

父はもちろん警官を殴り飛ばしたりなどしなかった。しかしとにかく一方的にしゃべりまくった。まわりの人が何ごとかと遠巻きに見ていた。「警察官職務執行法」という単語だけよく覚えている。その剣幕に思わず泣きだしてしまった。僕が。しかも父は僕が泣いたことまでお巡りさんのせいにした。気の毒に。

(けっきょくお巡りさんは去っていったが、もしそれで父が逮捕されていたらどうなっていただろうか? たぶん父は大喜びで友人の弁護士を呼び、旧知のジャーナリストにも連絡を取り、釈放されたあかつきには週刊現代あたりに行政警察活動と代用監獄の劣悪な環境をあげつらった体験記を売込みに行ったのではないだろうか。それはそれで恐ろしい)


そういう経験があるから、冒頭のエントリは少し斜めから読んだ。

「紛らわしい行動は慎め、(後ろ暗いことがないのなら、素直に職質に応じりゃいい話だろうが。)今どき娘と二人で買い物とかありえないからな(。念のため声をかけただけだってのに!)」

ということではないのかと。

もし違うのであればもちろんお詫びする。


僕も大きくなってから何度か職務質問を受けたことはあるが、おとなしく応じている。確かに、警官が誰に声をかけるのかというようなことは、ほとんど勘というか恣意だとは思う(警察官職務執行法それ自体に、これが濫用されることがあってはならないと書いてはあるけれども)。しかし彼らも仕事なのだし、僕に声をかけてきたからといって、そのことに対してとくだん腹を立てたりすることはない。「昨日はどちらにおられましたか?」「刑事さんは私を疑ってるんですか!?」というような対応は、個人的には意識過剰だと思う。

ただし、その場での「質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合に」は警察署などまで任意に「同行を求めることができる」(警察官職務執行法第二条2項)と定められているが、もちろんのこのことご同行する必要などない。自分の身が潔白なら往来で堂々と受け答えをすればいいわけだし、排水溝の中で職質を受けているならともかく、普通の道なら脇へどけばいいだけの話だ。まだ狭いならちょっと広い道を探せば良いのだ。同行を拒否したからといって逮捕されるようなこともあるまい(まあ仮に逮捕されても責任は取れないが)。

その場で警察官の質問にはきはき答えれば、基本的にはそれで終わる話ではないか、というのが個人的な体験から導き出された結論である。本当にヤバいときは、有無を言わさず連れて行かれるだろう。警察と戦うのはそういうときだけで十分だ。

「自分は何も悪いことをしていない。この警官は間違っている。間違いは認めさせなければならない。自分から折れることは決してありえない!」などとしゃちこばるのはお薦めのやり方ではない。みんながこんなふうに抗議したからといって警察が警邏活動を萎縮させるようなこともあるまいが、彼らの仕事を増やすのは僕としては気の毒ではある。もう泣かないけど。


もちろん警察権力が暴走しないよう市民が監視していかなければならない、というような意見はあるだろう。後者のエントリの問題意識は理解できなくもない。


(最初の投稿では自重してトラックバックを飛ばしませんでしたが、後者のエントリが作った流れがそれほどは広がらないので、支流を作ったつもり)


コメントいただいてます → http://d.hatena.ne.jp/islecape/20081104#c1225810270