暁はわりと覚える
第一幕
蝉と女性がいる。ふたりは互いに愛しあっているのだが、顔を合わせることはできない。ふたりの魂は共有のものなので、どちらかが生きているあいだ、もう片方は死んでいる。片方が死ぬたびに魂はもう片方の記憶を身にまとい、想い人のことを愛おしむ。双方死ぬ前に手紙を送りあうのだが、女性のほうは毎回ちょっとずつ文面が変わる。どうやら転生するたびに記憶を失っているようで人格が変わっている。蝉を愛していることは変わりないようなのだが……。
第二幕
立ち食いそば屋に入る。そば一杯では足りないかな、と三杯注文する(?)。おまけにご飯も二膳注文する(!?)。おかずがないよ。ラーメンライスならぬそばライスか。「それじゃつまらないだろう」と、そば店の主人が天ぷらをすすめてくる。う……お金がなあ……。けっきょく断りきれずに海老天と茄子天を追加で注文する。大事に食べよう……。店を出るとなぜか昭和三十年代みたいな街で、どことなくレトロ。それはいいとして、前触れもなにもなく突如暴動が起きる。そば店の主人が暴徒から女性を守ろうとして片目を失うのを目撃する。しかしそんな英雄的行為も記憶されることなく時はめぐる。現代に戻った僕は史跡の前でそんなことを思い出している。
第三幕
大学から配達記録郵便の予告がある。どういうことだろう。嫌な予感がする。受取ってみると:ろくに単位もとらず遊び呆けやがって、おまえもう除籍! わー。